柳也が絵を描いたり小説を書いたりゲームレビューしたり日常のことをぼやいたりしています。
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恐らくゲーム中の何処かの冥府主従。おまけに光の人。ほのぼのだかギャグだか分からない問題作。
お題は「BALDWIN 『浜の真砂は尽きるとも世に妄想のタネは尽きまじ』」様よりお借りしました。
※キャラ注意
※デス兄当然の様に擬人化注意
ご覧になる方は「続きを読む」よりどうぞ。
お題は「BALDWIN 『浜の真砂は尽きるとも世に妄想のタネは尽きまじ』」様よりお借りしました。
※キャラ注意
※デス兄当然の様に擬人化注意
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ふたりでお茶を
ふわふわのスポンジに真っ白なクリーム、飾る苺はルビーの輝き。お供の紅茶はミルクを先に、まろやかな味わいを楽しみましょう。
「よし」
白いクロスを敷いたテーブルの上に二人分のティーセットとケーキを用意した冥府大法官ユリウスは、完璧に整えられたそれに満足そうに頷いた。
此処は冥府内の一角にあるこぢんまりとした小さな部屋。華美ではないものの繊細で上品な内装のその部屋にあるのは白で統一された二人分の椅子と円卓。ユリウスは廊下に顔を出し、通りがかった一人の戦士に主を呼んでくる様に手配した。承諾した戦士が去った暫く後、白い法衣を纏った冥府の主がこの部屋を訪れ先に座っていたユリウスの向かいに腰を下ろす。
「手は洗われましたか?」
「うむ」
言葉だけで返せば良いものを、デスは律儀に袖を捲くって両手をユリウスの目の前に差し出す。蝋のように白く滑らかな細い手は僅かに湿り気を帯び、微かに石鹸の良い香りがする。幼子の様な素直な動作にユリウスは和みつつ、では食べましょうかと主を促した。
両手を合わせ、「戴きます」と声を合わせて食前の祈りを捧げる。考えてみればユリウスは兎も角として目の前の主は自身が神なのだから祈りを捧げなくても良い様な気もするがこれには理由がある。まだ主に仕え始めたばかりの頃この動作を不思議に思った主の問い掛けに「これは料理の元となった食材達に、貴方の命を頂きますという意味の祈りなのです」と説明した所、「生命に敬意を祓う事は良い事だ」といたく気に入り自分を真似て行うようになったのだ。余談だがユリウスも主の解釈を聞いて初めて「そう言えば命に対しての祈りなのだから主に対する祈りでもあるのか」と考え、其れからは食材達に加えて主に対してお伺いを立てる様な気分で食前の祈りを行う様になった。……そんなささやかな気持ちの変化を彼の主が感じ取っているかと聞かれたら怪しいものなのだが。
死の王が細やかな花の彫刻の施された銀のフォークでケーキを切り取り口の中に入れる。スポンジのほのかな甘みと生クリームのまろやかな甘み、苺の爽やかな甘酸っぱさが一体となって見事な調和を舌に齎す。
「如何で御座いましょうか、我が主」
「弟妹達にも食べさせたい」
その言葉こそが彼にとっての最大級の賛辞だと知っているユリウスはその答えに満足そうに微笑み、勿体なきお言葉、と恭しく死の王に頭を下げた。
「お前も早く食べろ。冷めて硬くなってしまうぞ」
ケーキは温かくして食べるものではないし、今しがた出来上がったばかりなのだからそう早く硬くなることも無いのだが、デスのピントのずれた気遣いに微笑ましい気分で苦笑し自分もケーキに手を付けた。
この二人だけの茶会が行われる様になったのは、まだユリウスが冥府に下って死の王に仕え出したばかりの頃だ。
死して魂だけの存在となり、肉体という枷から解き放たれたユリウスには生命維持の為の行動――――即ち食事や睡眠といった生理現象は必要無くなっていた。しかし生前からの習慣はそう簡単には抜けず、必要が無いと頭では分かっているはずなのに本能が求めるというジレンマに悩まされたユリウスは主に如何にかしてこのジレンマを解消できないものかと相談してみた。
「別に我慢せずとも、食事も睡眠も好きな様にとれば良いではないか」
それが死の王の下した結論だった。
余りにもあっさりと許可を出した主に本当に良いのかと確認をしてみたが、曰く「此処に居る以上時間は幾等でもあるのだから睡眠や食事で少々時間を取ったからと言って然程支障は出ないだろう。それよりも無理に我慢して精神的な余裕が無くなるほうが余程非効率的なのではないか」と普段の言動からは考えられない位まともで鋭い意見(失礼)に目から鱗が落ち、以来ユリウスら元生物の部下達は充実した食事と睡眠を取り寧ろ生前より健康的な生活を送ることとなった。
最初こそ三度の食事以外は無かったのだが、ユリウスの話で死の王が人間の生活に興味を持ち、冥府に残された文献等で人間の文化を多少(間違った方向に)学んで「地上では三時に間食をするらしい」とユリウスに話した。その頃の死の王はユリウスと出会い多少笑うようになったものの、弟が封印され妹が行方知れずとなり冥府の奥で孤独に過ごしていたことですっかり自暴自棄となっており、これで主の気が少しでも晴れるのならばとこの慣習を主の為だけに取り入れた。入れられる茶も日替わりの菓子もユリウス手ずからのもので、死の王は此れをいたく気に入り絶賛した。この時ばかりは生前趣味が高じてバファル帝国の宮廷菓子職人に弟子入りしてよかったと心底神(当然主に決まっている)に感謝したものだ。
因みにこの事で人間の文化を随分と気に入った死の王は「茶会の時間」に続いて「昼寝の時間」まで取り入れようとしたのだがそれはその場に居た部下一同が全員で却下した。理由は唯一つ、そこまで待遇が良くなってしまったら永久就職希望者で冥府は溢れてしまうからである。その後は死の王のみ「昼寝の時間」が許され、昼食後に死の王が念仏パジャマに着替えキングサイズのベッドに敷かれたお札柄布団の中にサルの縫いぐるみ型抱き枕を持って入ってすやすや可愛い寝息を立てて眠っているのは何処にも洩らしてはいけない冥府の最重要機密事項であったりするのだがこれは今回の話に関係ないので割愛する事にしよう。
まぁそんなこんなで、行われるに至った経緯は兎も角として二人きりの茶会は和やかかつ穏やかに過ぎて行った。
招かざる客人が訪れるまでは。
「こっんにっちはーーーー!!茶会に私も混ぜて下さいなーーーーーー!!」
能天気かつ馬鹿でかい声を聞いた瞬間ユリウスの顔は皿に残っていたケーキと正面衝突する。十五時十三分、ユリウス特製ショートケーキ、圧死により殉職。
何故ユリウスがいきなりケーキとキスしたのかさっぱり分からない死の王は取り合えず大丈夫かと声を掛ける。ユリウスは電光石火の勢いで懐からハンカチを出して顔を拭うと主に極上の笑顔で「大丈夫です」と返し(ここまで0,8秒)、その顔のまま部屋の入り口の方へ向き乱入者を睨み殺す勢いで振り向いた。
「この冥府まで態々何の御用ですかな、神々の王よ」
瞳の奥から「今すぐ此処から消えやがれこの野郎」と無言の呪詛を吐いているユリウスには全く構わず、乱入した詩人――――光神エロールはにこにこと人懐こそうな(見るものが見れば胡散臭いと断言できる)笑みを浮かべて冥府の主に歩み寄る。
「お久しぶりですね、デス」
馴れ馴れしく名前呼んでんじゃねぇお前敵の親玉だろうが。そう内心で毒づくユリウスに全く気付かず死の王は訪れた神々の王を歓迎した。
「うむ、百五十年ぶりか?」
「ええ。貴方に会えない間、とても淋しい思いをしましたよ」
嘘こけ、地上に出てる間中女に声掛けるわ酒呑むわ下手糞な歌歌うわ人間にちょっかい出すわ親子喧嘩で大津波起こすわやらかしてんのは何処の誰だ。ってさり気に手ぇ握んな。そういう事は自分トコの鬼嫁にやっとけ色ボケ乞食。
「今日は如何して冥府へ?」
「いえ、ジェルトンの町に居たら美味しそうな匂いがしましてね、其れを辿って来たら此処に」
もっとましな嘘吐けよ。どんな強い匂いなんだ、うちのケーキ。
「そうか…………、後でフレイムにも分けないといかんな。そこまで匂いが届くなら、さぞ羨ましがらせてしまっただろう」
信じたよこの御方。貴方何処まで純粋なんですか。
「まぁそんな訳で」
どーゆー訳だ。
「宜しければご一緒させて頂ければと」
先程からのユリウスの心のツッコミを無視して光神は帽子を外し胸に当ててにっこりと微笑む。一見この冥府の主に伺いを立てているようだが、これは殆ど光神の中での決定事項だ。良くも悪くも鷹揚で細かい事に拘らない死の王は、遥々来た光神を無下に帰したりはしないだろう。この男もそれが分かっているからこそ此処まで腹の立つ笑みを当て付けのように此方に向けているのだ。
「別に構わんぞ」
予想通りあっさりと許可を出した死の王は直ぐにあ、と声を出し立ち上がってユリウスと光神に告げた。
「エロールの分の椅子が無いな。今丁度良いのを見繕って持ってくる、暫し待たれよ」
「主の手を煩わせる事は御座いませぬ、ここは私が」
慌てて立ち上がり主を引き止める。だが死の王は構わん、と言い、
「お前はエロールに茶を入れてやれ。エロール、お前は私が椅子を取ってくるまで私の席にでも座っていてくれれば良い」
そう言い残し死の王は部屋から出て行く。残された光神はその背を見送って、
「いやー、相変わらず人の良さは健在ですねぇ」
「おうともよ。少なくとも何処ぞの遊び歩いてばっかのアホとは比べるのも馬鹿らしい位最高の主だからな」
死の王が居なくなった途端それまで慇懃で丁寧だったユリウスの物腰が豹変する。並みの魔物なら逃げ出しそうなユリウスの殺気をも光神は飄々とした態度で受け流す。
「おやおや流石は海賊上がりの大法官殿。ちょっと気を抜くとお言葉が汚くなりますねー」
「海賊上がりは皇帝の事であって俺は海賊なんざやってねぇよ永い事生きてるからとうとう耄碌したかボケじじい」
「あははは私より大分年取った見た目の癖して何言ってやがりますかねこの石頭法官はっていうか私を崇める帝国生まれならもう少し私に対して敬意を払ったって良いんじゃないですか」
「手前に祈り捧げる位だったらそこらのゴロゴロ虫拝んでた方がよっぽど建設的だっつの自惚れるのも大概にしやがれこの騒音発生器」
「全く此れだから美というものを理解しようとせず本ばっかり読んでる頭でっかちは嫌なんですよこの私の鳥をも誘う歌声とリュートの音の何処が騒音だというんです千年近く死体やってるもんだからとうとう耳と脳まで腐りましたかー」
「手前の歌で寄ってくんのは良いトコストレイペギー位なもんだろ大体俺はアンデッドじゃ無いっての手前こそその腐った目ん玉交換したら良いんじゃねぇか?」
両者一歩も譲らず。顔はニコニコ笑ったまま米神に青筋おっ立て睨み合い。暫くの間無言で睨み合う二人だったが此処でユリウスが対エロール用必殺のカードを切り出した。
「っていうかふざけるのも大概にしねぇと踊り子のねーちゃんに鼻の下伸ばして運命石貢いだ事手前のカミさんにばらして序でに手前のk(以下検閲削除)もばらすぞこの野郎」
びきっ。
その言葉を聞いた瞬間エロールの顔が大きく引き攣り顔色がイナーシーよりも青くなる。エロールが凍りついたのは前者のユリウスが知るはずの無い秘密が握られていた事に対してか、はたまた後者の実行されたら二度と男として生きていけなくなる史上最悪の所業についてか。
「な、な、」
「『何で貴方が其れを知っているんですか』とでも言いたそうだな」
ユリウスの言葉にコクコクと首を縦に振る。ユリウスは冷ややかな視線をエロールに送りつつ言葉を紡いだ。
「三日程前だったかな、此処に来たんだよ。珍しい灰色の髪の男や剃髪したミルザの聖戦士も一緒で印象深かったから良く覚えてる。で、手前が持っている筈のアメジストを首に掛けてたから聞いてみたらあっさり答えてくれたぞ?」
「しまったあああああぁぁぁぁあああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
此の世の終わりの様な声出して、エロールは膝をつく。此の世に神は居ないのかーという嘆きの声にいやお前が神だろとツッコミを入れ今回の勝者は負け犬にとっとと帰れと追い討ちをかけた。エロールはふらつきながらも立ち上がり出口まで辿り着くとキッとユリウスを睨みつけ、指を指して呪詛を吐いた。
「今日はこの位にしておきましょう!!しかし、この次はこうはいきませんよ!!」
「何処の三流悪役の棄て台詞だ」
苦し紛れの負け惜しみもあっさりとかわされ、打ちひしがれたエロールの背中は出口から消えた。それを見送ったユリウスは、ぼやきとも愚痴ともつかない疑問を吐く。
「全く、一体何の為に此処に来たんだ?」
ひょいっ、
「嫌がらせ」
さっ。
………………………………………………。
「あいつが死んだら書類改ざんしてでも煉獄送りにしてやる………………」
右手で頭を抱え、マグマの様に湧き上がってくる怒りを何とか抑えようと勤める。するとエロールが開けたままにしておいた扉の向こうから足音が聞こえ、それが先程去っていった公害獣エロビーストのものでは無い事を知るとユリウスは怒りを抑え顔を上げた。
「エロールは如何した?」
足音の主が敬愛する主である事を確認した瞬間ユリウスは先程までの怒りをバルハラントの彼方まですっ飛ばし微笑みを持って主を迎える。はいそこ、調子良いなんて言わない。
「エロール神ならば、先程急用が出来たと慌ててお帰りになられました」
ユリウスの嘘八百に簡単に騙された死の王は「そうか、それは残念だ」と持ってきた椅子を置いて溜息を吐く。ユリウスはそんな主の姿に苦笑し、声を掛ける。
「茶がすっかり冷めてしまいましたな」
「そうだな」
自分のカップを覗いてデスが答える。淹れ直しましょう、とポットを持って隣の作り付けの小さなキッチンへ向かい、思い付いて主を振り返る。
「主、明日の茶請けは何に致しましょうか」
突然の問いに死の王は一瞬目を丸くし、ふむ、と顎に手を当てて考え込む。
「もう秋だから、栗のモンブランが良い」
「では其れで。明日は炎帝殿の分も御作り致しましょう」
無粋で騒々しい乱入者は大嫌いだが、あの紳士的な冥府の守り人の事は好きだ。明日は彼を招いて三人で和やかに過ごすのも良いだろう。
ユリウスの言葉に主は明日が楽しみだな、と微笑んだ。それにユリウスも笑みを返し、新たな紅茶を入れるべく準備に取り掛かる。デスはフォークの先で真っ赤な苺を突いて、いつか弟妹達ともこうして集まりたいものだと呟いて苺を口の中に入れた。
全世界のユリウスファンに土下座必死の色物、しかも長い。
おまけに想像以上にユリウスさんがデス兄に過保護かつ溺愛。どうしよう。
うちのデス兄はサル様やシェラハちゃんの件を除けばエロ詩人と仲は悪くない。ユリウスさんとエロ詩人は犬猿の仲。
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・青を筆頭に鮮やかな原色系の色が好き。宝石の色に憧れ中。
・見れる絵を目指してデッサンを模索中
【サイトの案内】
・メインはロマサガとミンサガ……の筈
・だが何より多いのは俺の駄目すぎる日常
・捏造だけのサイト
・嫁は旧ヘイト、婿は赤魔さん
・最早うちのグレイは止まらない
・ガラハドへの差し入れは養毛剤で
・FVロマサガ2のロナルドに萌えた
・ルドラの関西弁市長が好きなのは俺だけだろう
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